賃貸管理もここが主戦場へ、「築古賃貸物件」という巨大マーケット

ハウスメーカーが賃貸管理事業を強化?!
大手ハウスメーカーの収益構造をご覧になったことはあるだろうか。これまでは「建築売上」が大黒柱として最も高い構成比を占めていたことは容易に察しがつくであろう。
ところが、この様子が少し変わりつつある。
ある大手ハウスメーカーがIRで掲げた「30年ビジョン」を読み込んでみると、国内事業の方針は明らかに「ストックビジネス」の比率を膨らませている。ストックビジネスとは、賃貸管理事業やサブリース事業、そこから派生するリフォーム事業のことを指す。
これまで大手ハウスメーカーでは、賃貸仲介や賃貸管理などを担う部門は関連子会社や末端事業部門として位置付けられていることが多かった。しかしながら、ここにきて賃貸仲介や賃貸管理を組織図のど真ん中に配置し直すハウスメーカーも出現している。
その背景には「リノベーション適齢期」を迎えた物件とそのオーナーがこれから団塊世代のごとく出現するという、したたかな算段があるようだ。
賃貸住戸120万戸のうち築30年以上は30%。そこがリノベマーケットになる
国内約120万戸強ある賃貸住戸の中でも、築30年強の物件が30%近くあると言われており、ここが巨大なリノベーションマーケットとなる。こうした物件のオーナーは高齢化していることもあり、次世代へのスマートな承継を意図して「物件価値をしっかり上げてから」と考えるケースが少なくない。「せっかく築いた資産を後世に残したい」という顕在ニーズを抱える現オーナー、そして「まともな資産なら相続したい」という後継者側の潜在ニーズもある。
また、人口減少で空室率がただでさえ上昇していく過程において、入居者獲得に一層の競争力が求められるようになる。入居条件の見直しという消極的戦略も自ずと限界を迎え、物件そのものの価値を高めるリノベーションや外壁工事、内装の差別化という選択肢をオーナーもこれまで以上に具体的に意識するようになる。
先手を打つことが肝要
実はハウスメーカーはここに着目している。
並居るハウスメーカーの営業マンが、そうしたマインドのオーナーに対してローラー型の提案活動を一気に開始すると、地場の管理会社にとっては強力なライバル出現となる。その前に、しっかり先手を打って自社の取引オーナーに対して適時的確な価値向上提案を行えるかどうかが重要である。
「それはわかっていても、現場が忙しくて手が回らない」などと言っている場合ではなくなる時が、目の前に迫っている。
株式会社船井総研コーポレートリレーションズ
代表取締役社長 柳楽 仁史